偶然であり、必然。
本来なら別のお客さまが召し上がるはずだったランプ。
理由あってわが家へ。
まるで私に食べられるために、会いに来てくれたみたい。
皿の上で艶かしく光り、つややかに誘ってくる。
焼き上がった時の香りは奥ゆかしい気がしたのに・・・。
食べると口いっぱいに芳醇な香りと旨みの粒子が爆発する大胆さ。
そして、飲み下した後の余韻が一段と長い。
花火大会が続いているかのように…ずっとずっと波が押し寄せ、力強い余韻が残る。
ここ数年のランプでは間違いなく一番の衝撃。
これまで食べてきた中で最高の肉かもしれない。
久しぶりの純但馬とはいえ、ここまでのものはなかった。
いつもは柚子胡椒を添えるのに、 合わせたいとも思わない。
ワインを引き上げる肉は初めての経験。
94年のボルドーと・・・
あ。
思わず声がでた。
この子、「ぼたん」(母牛)の孫娘だった。
繁殖者は兵庫県豊岡市の新田義孝さん。
「ぼたん」にはご縁がある。
それは4年以上も前。
但馬家畜市場へ取材したときのこと。
「ぼたん」の娘が200万円以上の高値で落札されていたっけ。
7日経った今も目を閉じれば蘇る強烈な余韻。
陶酔境にひたった日の肉のこと。